大人の発達障害(ADHD)で忘れ物が多いのはなぜ?原因と対策

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大人の発達障害(特にADHD)を持つ方の中には、忘れ物が多いことで日常生活や仕事に大きな支障をきたしているケースがよく見受けられます。

ふと気づくと大事な書類やスマホ、財布などをどこかに置き忘れたり、予定をまるごと忘れてしまったり…。自分でも「また忘れてしまった」と落ち込んだり、周囲に迷惑をかけることで肩身の狭い思いをしたりすることはないでしょうか。

本記事では、大人の発達障害(特にADHD)の方が忘れ物をしやすい理由や、その対策についてわかりやすく解説します。日常生活や職場で役立つ具体的な工夫を紹介し、うっかりミスを減らしてストレスを軽減するためのヒントをまとめました。

目次

ADHDの特徴が引き起こす「忘れ物」のメカニズム

情報処理が苦手なADHDの脳

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、注意力の維持や集中力のコントロールが難しい、衝動的に行動しやすいといった特徴を持つ発達障害の一種です。大人になってもこれらの特徴が残り、仕事や日常生活に支障が出ることがあります。

ADHDの方は情報処理の際、一度に多くの情報が入ってくると混乱しやすい傾向があります。必要な情報を取捨選択して記憶に留めることが苦手であるため、結果的に「持ち物を置きっぱなしにしてしまう」「必要書類を机の上に置き忘れる」などのミスが増えてしまいます。

ワザと忘れ物をしているのではなく、”仕方なく”忘れ物をしてしまっているということですね。

短期記憶の課題

ADHDを持つ方は、「短期記憶」(ワーキングメモリとも呼ばれる、一時的に情報を保持する機能)に課題があるとされています。たとえば「あとで会議資料を持っていかなくては」と思っても、ほかの業務や雑念が入ってくることで、すぐに頭の中から飛んでいってしまうのです。

  • 「あとでメールを返信しよう」→ 別の業務に集中し始めてすっかり忘れる
  • 「会議室に行くときに書類を持って行く」→ 部屋を出るタイミングで別のことを考えてしまい、資料を置いてきてしまう

注意力が散漫になりやすい

また、ADHDの方は些細な刺激によって注意が逸れやすい特性があります。スマホの通知や周りの会話、職場でのアナウンスなど、さまざまな刺激が飛び込むことで、意図していた行動を途中で放棄してしまうことが珍しくありません。

大切な仕事をこなしながらも「他の情報」に気を取られ、結果的にうっかりミスや忘れ物が多くなるのです。

忘れ物が多いことで引き起こす悩みと感情

大人の発達障害の特徴としてよく挙げられるのが、頻繁なミスや失敗を重ねることで自己否定感やストレスが蓄積しやすいという点です。

  • 「また忘れた…自分はダメだ」
  • 「どうしてこうも物覚えが悪いのか」

と、自分を責めて落ち込んでしまいがちです。周囲へ迷惑をかけることへの罪悪感から、職場の人間関係に影響が及ぶケースもあります。

職場での評価や信頼の低下

ADHDの方の職場でのミスは本人の想像以上に周囲から問題視されることがあります。特に、大人になってからの仕事では、忘れ物ひとつが大きな契約やプロジェクトの遅延につながることも。結果として、評価や信頼に悪影響を及ぼし、本人のモチベーションが大きく下がってしまうのです。

  • 「書類をオフィスに置き忘れて商談に行ってしまう」
  • 「顧客とのアポイント日時をすっかり忘れる」

このようなミスが重なると、ADHDの方はさらに強いストレスを感じ、悪循環に陥りやすくなります。

業種別にみる「忘れ物が多い」具体的な事例

以下の表では、さまざまな業種・職種で起こりがちな「忘れ物やミス」にフォーカスし、ADHDや大人の発達障害特有の問題がどのように現れるかをまとめました。

業種忘れ物/ミスの例影響
飲食業注文をキッチンに伝え忘れる
食材の発注を忘れる
顧客満足度の低下、在庫不足による営業への支障
販売員割引情報の説明を忘れる
顧客要望を聞き漏らす
売上ロス、クレーム増加
運送業荷物の積み忘れ
配送先を間違える
配送遅延、顧客クレーム
工場勤務機械メンテナンスを忘れる
安全装備を身につけ忘れる
生産ライン停止、事故リスク上昇
IT業界コードのバックアップを忘れる
締め切り日をうっかり失念
データロス、プロジェクト全体の遅延
営業職重要資料の準備を忘れる
クライアントとの約束を失念
信頼度の低下、商談不成立
ホテル業ルームサービスの提供忘れ
予約情報の確認を忘れる
ホスピタリティ低下、クレームやブランドイメージの低下
一般事務書類をファイリングし忘れる
メールの返信を忘れる
作業停滞、社内外の信頼減少

上記のように、ADHDの特性に起因するミスは多種多様で、どの業種・職種でも起こりうることがわかります。

忘れ物を減らすための具体的対策・改善策

1. リスト化&チェックリストの活用

「ADHDの忘れ物対策」の代表的な方法として、リスト化やチェックリストの活用があります。やるべきことを全て書き出し、一つずつ確認しながら行動するだけでも、忘れ物を減らす効果は大きいです。

  • 通勤前チェックリスト:財布、スマホ、鍵、身だしなみ、PCなど
  • 仕事用チェックリスト:今日対応すべきタスク、期限、必要書類など

2. カレンダーアプリ・リマインダーの徹底活用

「カレンダーアプリ」「リマインダー」といったデジタルツールは、日常の管理を助ける強い味方になります。

  • スマホのアラーム機能:会議の30分前に通知を設定
  • クラウド型カレンダー:Googleカレンダーなどで予定を共有し、自分だけでなくチーム全体でも確認可能

視覚的・聴覚的にリマインダーを設定しておくと、忘れ物を思い出すきっかけが増えます。

3. 優先順位付けと仕事の細分化

ADHDの方は、複数のタスクを同時進行すると混乱しがちです。「優先順位付け」を意識して、重要度と緊急度に応じた並び替えを行いましょう。また、大きな仕事は細かく分割し、目標達成までのステップを明確にすると、途中で忘れにくくなります。

  • 緊急度が高い期限が迫っている
  • 重要度が高い業務成果に直結する

仕事をABCなどに分類してみると取り組みやすくなります。

4. 情報の視覚化で記憶をサポート

「情報の視覚化」は、脳内で処理しきれない情報を外部に「見える形」で保管するテクニックです。

  • ホワイトボードや付箋:進行中のタスクを付箋に書き、ボードに貼り付けておく
  • カラーマーカーの活用:重要箇所を色分けし、視覚的に区別

ADHDの方は目に見える形で情報を整理すると、「忘れ物」や「やり忘れ」を減らしやすくなります。

5. メモ術&音声記録の併用

ADHDの方に効果的なメモ術としては、思いついたときにすぐメモを取る習慣を身につけることが大切です。

ペンとノートを持ち歩くのも良いですが、スマホの音声入力機能を活用するのも便利な方法です。特に外出先や仕事中でメモを取る余裕がないときは、ボイスメモで「後でこれをやる」と記録するだけでも、忘れ防止に役立ちます。

日常生活での忘れ物対策~ルーチン化とストレス管理~

ADHDの方に共通する傾向のひとつに、日常が慌ただしく、ルーチンが確立しにくいことがあります。 このため、忘れ物が増えてしまうことも少なくありません。

  • 鍵や財布の定位置を決める:家を出る前に必ず同じ場所から取る
  • 外出前チェックリスト:鞄の中身や身だしなみを習慣的に確認

こうしたシンプルなルールを毎日繰り返すことで、忘れ物をぐっと減らせます。

ストレス管理や自己管理も大切

ADHDの方にとって、ストレス管理や自己管理はとても重要です。 過度なストレスがかかると注意力がさらに散漫になり、忘れ物が増える傾向があります。そのため、適度な休息や運動、趣味の時間を取り入れ、心身の余裕を作ることも忘れ物対策の一環として大切です。

  • 瞑想や深呼吸、軽いヨガなどで気分転換
  • 気が散りやすい場所を避け、集中できる環境を整える

デジタル時代の自己管理ツール

近年はスマートフォンやタブレットなど、デジタルツールが格段に発展しています。ADHD特有の「短期記憶の問題」「注意散漫」に対しては、デジタル技術をフル活用することで大きく改善する可能性があります。

  • AIスケジュール管理アプリ:予定やタスクを自動で振り分けてくれる
  • クラウドメモツール:どのデバイスからでも同じメモにアクセスできる
  • イヤホン型デバイス:音声リマインダーを耳元に流す

「発達障害 記憶力の問題」「ADHD 仕事の効率化」をキーワードにした情報収集を行うと、最新の便利ツールを見つけられるでしょう。たとえば、AI音声アシスタントやチャットボットを活用して「忘れてはいけない事柄」をリアルタイムで通知させることも可能です

忘れ物の多さに伴う感情 トラウマや不安への対処

失敗体験の蓄積が生むトラウマ

忘れ物を繰り返してしまうと、「自分は何度やってもダメだ」という否定的な感情が生じ、いわゆる「トラウマ」のように根強い不安や落ち込みを抱える場合があります。

発達障害の人は繊細な一面があり、忘れものによる失敗の経験を積み重ねるとある意味ではトラウマのような感情を抱きます。

忘れ物をしたときに抱く感情について

忘れ物をしてしまうたびに、本当に自分が嫌になります。大事なものを忘れるたびに、「またか」と自分を責めています。自分のうっかりさに、本当に落ち込みます。

自分の忘れっぽさに、本当にイライラしてしまいます。他の人たちはそんなに物を忘れないのに、なんで私だけがこんなにダメなんだろうと思ってしまいます。

自分の忘れ物が、周囲に迷惑をかけていることが分かっていて、それがまた苦しい。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

時には「もう無理かもしれない」と途方に暮れることもあります。いくら注意しても、また忘れる。その繰り返しに、自分でもどうしたらいいか分からなくなります。

たまには「もういいよ、忘れたって!」と逆切れしてしまうこともあります。分かってる、忘れちゃいけないってことは。でも、どうしてもうまくいかないんです。

忘れ物をし続けてしまうことに対する本音です。
周りからみれば、”また”忘れ物をしたと思われてしまうかもしれませんが…。

カウンセリングやコーチングを検討

悩みが大きい場合には、臨床心理士やカウンセラーによるサポートが選択肢になります。

  • 認知行動療法:マイナス思考や行動パターンを見直す
  • コーチング:目標設定やタスク管理の方法を一緒に考える

こうした専門家の力を借りながら、短期記憶の改善や忘れ物に対する感情のコントロールを意識して取り組むことで、心の負担を軽くすることができます。

工夫とサポートで忘れ物は減らせる

大人の発達障害(ADHD)における「忘れ物が多い」という問題は、本人の意識や努力だけで解決するのは難しい面があります。しかし、デジタルツールの活用や周囲のサポート、タスク管理の工夫を組み合わせることで、日常生活や仕事でのミスを大幅に減らすことが可能です。

  • チェックリスト・リマインダーなどの「外部記憶」を活用する
  • 優先順位付けやタスクの細分化で混乱を防ぐ
  • ストレス管理やカウンセリングで自己効力感を高める

一度に全てを完璧にこなすのは難しいですが、少しずつ生活のパターンや仕事の進め方を改善していくことで、忘れ物によるトラブルやストレスを軽減できます。周囲の理解と協力も大切です。上司や同僚、家族に自分の特性を理解してもらい、一緒に対策を考えていくことで、「ADHDの忘れ物」の悩みがいくらか軽くなるはずです。

この記事の監修者

鈴木祐貴(すずき ゆたか)

大人の発達障害専門サポート

発達障害の特性を持つ大人のためのコンサルタントとして、多くの方の「自分らしく働く」未来をサポートしています。

発達障害を持つ方が普通に働き、安心して日常生活を送れるような環境作りに情熱を注いでいます。

経歴と実績▼

・人材育成のプロ:人材育成10年、マネジメント10年、管理職8年の経験を持ち、発達障害を持つ部下や後輩の育成にも成功。支店や部署全体の成績向上に貢献。

・多部門での実績:人事部、営業部、管理部、経営企画部で所属長を歴任。
営業・マーケティング、社内マネジメント、企画開発など幅広い分野で活躍。

大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)・グレーゾーン・繊細さん サポートについて

ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

発達障害で悩んでいると、一人で抱え込みがちになってしまうかもしれません。

でも、あなたは決して一人ではありません。困ったときは、誰かを頼ってもいいんです。

むしろ、人とつながることで新しい視点や解決策が見つかることも多いものです。

自分の特性を理解し、それを活かすことで、これまで見えなかった可能性が広がります。あなたが感じている不安や悩みは、共感できる人が必ずいます。

私もその一人として、あなたの力になりたいと思っています。

これまで多くの方々が、自分自身と向き合いながら前に進んできました。

あなたもきっと、自分らしい生き方を見つけることができます。その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ幸いです。

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