私たちが日々生きていく上で、「自分ならできる」という自信や信念は非常に大きな意味を持ちます。これを心理学では「自己効力感」と呼び、挑戦心を高めたり、行動に対する意欲を生み出したりするうえで欠かせない要素です。
しかし、大人の発達障害を持つ方にとって、自己効力感が低下してしまう状況は珍しくありません。仕事や人間関係での失敗体験が積み重なることで「自分には無理だ」と感じ、さらなる挑戦を避ける悪循環に陥ることもあります。
本記事では、大人の発達障害と自己効力感の関わり、そして自己効力感の低下がもたらす影響や具体的な改善策について詳しく解説します。自分の可能性を広げ、自信を取り戻すためのヒントを見つけるきっかけとなれば幸いです。

自己効力感とは?~大人の発達障害との関係
自己効力感の定義
自己効力感とは、「自分がある課題や仕事をうまくやり遂げられる」という確信や信念のことです。
この感覚が強い人は新しい挑戦に対して積極的になれますが、逆に弱い人は「どうせ失敗するかも」と考え、挑戦を避けるようになります。
大人の発達障害における自己効力感の低下
大人の発達障害を持つ方は、子どもの頃から周囲とうまくコミュニケーションが取れなかったり、学業や仕事で失敗が続いたりした経験を抱えている場合が多いです。
その結果、「自分は何をやってもダメなんだ」という思い込みが形成されやすく、自己効力感の低下につながります。さらに大人になると、職場や人間関係の複雑さが増し、失敗から立ち直るのが難しくなるため、悪循環に陥ることもあります。

自己効力感が低下すると起こる影響
1. 新しい挑戦を避ける
自己効力感が低いと、「やってみても失敗するかも」と考え、あらゆる新しい試みから一歩引いてしまう傾向があります。
たとえば仕事で新しいプロジェクトを任されても、「できないに決まっている」と思い込んでしまい、意欲的に取り組めなくなるのです。
2. 自己評価の低下
「自分には能力がない」「周囲に迷惑をかけるだけ」という思いが強まると、自己評価が下がり、自信を失ってしまいます。すると、職場やプライベートでも消極的になり、ますます成功体験が得られないという悪循環が起こります。
3. 対人関係にも影響
自己効力感が低下すると、家族や友人とのコミュニケーションにも支障が出ることがあります。
たとえば「どうせうまく話せない」「相手に迷惑をかける」と考えてしまい、必要な相談や助けを求めにくくなるのです。その結果、孤立感が深まり、ストレスが増加するケースも見受けられます。
家族・友人・恋人への影響~人間関係で生じる変化
以下の表では、自己効力感が低下した際に起こりやすい人間関係の変化をまとめました。
関係性 | 起こりやすい状況 | 具体例 |
---|---|---|
家族 | 会話や交流が減る助けを求めづらい | 「自分の問題は自分で解決しないといけない」と思い込みが強くなる |
友人 | 新しい誘いを断る誤解やトラブルが増えやすい | 遊びの誘いに「どうせ楽しめない」と消極的になってしまう |
恋人 | コミュニケーション不足将来の話題を避けがち | 「迷惑をかけるかも」と思い、デートの計画も立てられない |
自己効力感の低下 家族との関わり方
- 家族と話す回数が減る: 自信がなくなると、家族との会話も少なくなる。
- 家族と過ごす時間が少なくなる: 一緒にいる時間が減って、自分の部屋にこもりがちになる。
- 家族からの助けを拒むことが多くなる: 困ったときでも、家族の助けを受け入れられなくなる。
- 自分の気持ちを家族に伝えにくくなる: 自分の思ってることや感じてることを話せなくなる。
- 家族のイベントや集まりを避ける: 家族での集まりやイベントに参加するのが億劫になる。
- 家族との関係に不満を感じる: 家族とうまくいってないと感じることが増える。
- 家族から孤立する感じがする: 家族の中で自分だけがひとりぼっちに感じる時がある。
- 家族の期待に応えられないと感じる: 家族が期待していることに応えられないと思うことが多くなる。
- 家族のサポートを感じにくくなる: 家族が支えてくれているのに、それを感じにくくなる。
- 家族に対して申し訳なく感じる: 家族に迷惑をかけている、申し訳ないと思うことが増える。
自己効力感の低下 友達との関わり方
- 友達とあまり話さなくなる: 自信がないと、友達と話すことが減ってしまう。
- 友達とのトラブルがストレスに: 小さなトラブルでも、すごくストレスを感じやすくなる。
- 遊びに行くことが少なくなる: 自分に自信がないので、友達との遊びにもあまり行かなくなる。
- 助けを求めにくい: 困ったときに友達に助けを求めることが苦手になる。
- 友達との関係が浅い: 友達と深い関係を築くのが難しく、関係が浅いままになることが多い。
- 自分を悪く思う: 友達との関係がうまくいかないと、自分のことをますます悪く思ってしまう。
- 自分から人と離れる: 人と関わるのが嫌になって、自分からひとりでいることを選ぶようになる。
- 友達を失いやすい: 友達と仲良くするのも難しくなって、友達が少なくなる。
- ひとりぼっちを感じる: 友達が少なくなることで、孤独を感じやすくなる。
- 新しい友達を作るのが難しい: 自信がなく、新しい友達を作るのも難しくなる。
自己効力感の低下 恋人との関わり方
- デートの計画を立てるのが難しい: 自信がないと、どこに行こうか、何をしようか決めるのが大変。
- 恋人とのコミュニケーションが少なくなる: 話すことが少なくなって、メッセージを送ることも減る。
- 恋人への感謝の気持ちを表現しにくい: ありがとうや好きだよと言うことが難しくなる。
- 恋人の小さな行動に過剰に反応する: ちょっとしたことで傷ついたり、怒ったりすることが増える。
- 恋人との将来を考えるのが怖くなる: 一緒にいる未来を想像するのが不安になる。
- 恋人からの助けを受け入れにくい: 困ったときも、なかなか助けてほしいと言えない。
- 恋人との距離感がわからなくなる: どれくらい近づいていいのか、どれくらいスペースをあけるべきか迷う。
- 小さな喧嘩が多くなる: ちょっとしたことでケンカになったり、すぐに不機嫌になることが増える。
- 一緒にいても楽しめない: 一緒にいても楽しいと感じることが少なくなる。
- 恋人に対して申し訳なさを感じる: 自分が恋人に迷惑をかけている、足りない存在だと思うことが増える。
悪循環を断ち切るためには
人間関係の後退や孤立感を防ぐには、できる範囲で相手に自分の不安や悩みを伝え、サポートを得ることが大切です。
特に大人の発達障害を持つ方の場合、専門家の助言や周囲の理解が自己効力感の回復に大いに役立ちます。

仕事面で自己効力感が低下するとどうなる?~悪影響と対策
1. モチベーションの低下
失敗が続くと、新しい業務に取り組む意欲が湧かなくなります。大人の発達障害の方は細かいミスが積み重なりやすく、それによって職場での評価が下がると、ますますやる気を失ってしまうのです。
2. 消極的な姿勢
「失敗をしてさらに評価が下がるくらいなら、何もしない方がいい」と考え、新しいプロジェクトや挑戦を遠慮してしまいます。これでは仕事の幅が広がらず、自己成長や成功体験を得るチャンスが減少します。
3. 職場での対人関係への影響
自己効力感の低下に伴い、同僚や上司とのやりとりもギクシャクすることがあります。自信がない状態で仕事をしていると、人のアドバイスや指摘を素直に受け止めにくくなり、他者に対して批判的な態度を取ってしまう場合もあるでしょう。
大人の発達障害 自己効力感を高めるための具体策
1. 小さな成功体験を積む
- 朝一番に簡単なタスクを完了する
例:メールの返信、デスクの片づけなど、確実に終わらせられる業務を行い達成感を得る。 - 短い時間で取り組める目標を設定
例:30分以内に資料を整理するなど、ゲーム感覚でクリアしていく。
2. 目標設定と振り返り
- 小さな目標の設定
週単位・月単位で自分のできそうな範囲を決め、「これだけはやる」と約束して実行する。 - 一日の終わりに自己評価を行う
今日はどんなことができたのか、何を改善できるかを振り返り、できたことをポジティブに捉える。
3. 周囲のサポートと肯定的な評価
- 褒める文化の醸成
職場や家庭で、改善が見られた行動や成果を率直に褒め合う習慣を作る。
- 努力を認める言葉がけ
結果だけでなく、過程での努力や姿勢を評価する。「うまくいかなかったけど、よく工夫したね」などの言葉が大きな自信につながる。
4. 専門家の活用
- カウンセリングやコーチング
自己効力感を下げている原因を客観的に分析し、改善策を提案してもらえる。 - 就労支援機関の利用
発達障害の方が利用できる就労移行支援などのサービスは、仕事上の課題を一緒に解決していくための専門的なサポートを提供してくれる。

小さな成功体験から生まれる大きな自信
大人の発達障害を持つ方の自己効力感の低下は、仕事や人間関係など多方面で深刻な影響を及ぼします。しかし、だからといって改善が不可能なわけではありません。小さな成功体験の積み重ねや、周囲の適切なサポート、専門家の助言によって、徐々に自己効力感を高めることができます。
- 短時間で達成できる目標を設定する
- 日々の成功を認め、振り返る
- 職場や家族・友人からの肯定的なフィードバックを意識する
- 必要に応じてカウンセリングや支援機関を活用する
これらのステップを少しずつ積み上げることで、「自分にもできる」という自信が芽生え、より豊かで充実した生活や仕事へとつながっていきます。

本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。


この記事の監修者

鈴木祐貴(すずき ゆたか)
大人の発達障害専門サポート
発達障害の特性を持つ大人のためのコンサルタントとして、多くの方の「自分らしく働く」未来をサポートしています。
発達障害を持つ方が普通に働き、安心して日常生活を送れるような環境作りに情熱を注いでいます。
経歴と実績▼
・人材育成のプロ:人材育成10年、マネジメント10年、管理職8年の経験を持ち、発達障害を持つ部下や後輩の育成にも成功。支店や部署全体の成績向上に貢献。
・多部門での実績:人事部、営業部、管理部、経営企画部で所属長を歴任。
営業・マーケティング、社内マネジメント、企画開発など幅広い分野で活躍。
大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)・グレーゾーン・繊細さん サポートについて



ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
発達障害で悩んでいると、一人で抱え込みがちになってしまうかもしれません。
でも、あなたは決して一人ではありません。困ったときは、誰かを頼ってもいいんです。
むしろ、人とつながることで新しい視点や解決策が見つかることも多いものです。
自分の特性を理解し、それを活かすことで、これまで見えなかった可能性が広がります。あなたが感じている不安や悩みは、共感できる人が必ずいます。
私もその一人として、あなたの力になりたいと思っています。
これまで多くの方々が、自分自身と向き合いながら前に進んできました。
あなたもきっと、自分らしい生き方を見つけることができます。その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ幸いです。
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