大人の発達障害 ADHD 集中できない 継続できない理由
日々の生活や仕事の中で、何かに集中し続けることが難しいと感じる場面があるかもしれません。
特に、大人の発達障害、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性を持つ方にとっては、思ったように集中ができなかったり、途中で気が散ってしまうことが少なくありません。
『仕事や勉強を始めようとしても、どうしてもやる気が出ない…』
『集中力が続かず、気がつけば別のことに気を取られていた…』
そんな悩みを抱える方も多いでしょう。
ADHDの特性により、集中力を長く保つことが難しく、仕事や勉強がうまく進まないことがよくあります。
今回の記事では、発達障害の方がどのような状況で集中力が途切れてしまうのかを、具体的なケースをあげながらみていきましょう。
集中力が途切れる状況を一緒に探ることで、対策を見つけられるかもしれません。
大人の発達障害 ADHD 集中できない 継続できない理由 case①
重要なメールの返信を後回しにしてしまいトラブルが発生
Aさんは上司から「重要な取引先からメールが来ているので、今日中に返信しておいてほしい」と依頼されました。
「すぐに返信しよう」と心に決めたAさんはパソコンを開き、メールの下書きを始めました。
しかし、その時、同僚から「ちょっと手伝ってほしい」と話しかけられ、Aさんはその要望に応じることにしました。
「ちょっとだけだから、すぐに戻れるはず」と思いながら、Aさんは同僚の仕事を手伝い始めました。
その作業が思ったよりも長引き、気づけば午後も後半に差し掛かっていました。
同僚の仕事が終わった後、Aさんは再びメールに取り掛かろうとしましたが、ふと自分の机上に置かれた未読のメモや他の仕事が目に入りました。
「これも今日中に片付けておかないと…」と考えたAさんは、メールの返信を後回しにして、他の仕事に取り掛かってしまいました。
翌朝、上司から「取引先から催促の電話が来ているよ。昨日のメール、返信できた?」と尋ねられたAさんは、そこで初めてメールの返信を忘れていたことに気がつきました。
慌てて返信したものの、取引先との信頼関係に影響が出てしまいました。
このケースでは、Aさんは「メール返信」という最優先の仕事があるにもかかわらず、他の同僚の依頼や目の前の仕事に気を取られ、重要な業務を後回しにしてしまいました。
本来なら、最初に優先順位の高い仕事を終わらせ、その後で他の仕事に取り組むべきでした。
ターニングポイント
Aさんは「重要なメール返信」に取り掛かろうとした瞬間、同僚から手伝いを依頼され、それに応じてしまいましたね。
この時点で、Aさんは最優先ですべきメール返信を後回しにしており、その後も別の業務に気を取られ続けた結果、重要な業務が滞り、取引先との信頼関係に影響が出てしまいました。
大人の発達障害 ADHD 集中できない 継続できない理由 case②
早く作業を終えることにこだわり、集中しなければいけない場面で集中できない
Bさんは上司からお客様のデータを紙媒体からExcelに入力する仕事を依頼されました。
「氏名、性別、年齢、電話番号、住所と入力項目が多いから、慎重にお願いね!」と上司から指示を受けました。
また、「量が多いので本日中でなくても大丈夫です。明日中に終われば十分ですし、無理そうなら遠慮なく相談してね」とも言われ、Bさんは快く引き受けました。
「入力するだけなら簡単だ」とBさんは内心思っていました。
Bさんは上司の期待に応えようと、迅速に作業に取り掛かりました。
明日中でよいと言われていた仕事を、その日のうちに片付けたのです。
上司から「お!早いですね!ありがとう」と声をかけられ、Bさんは達成感を感じました。
しかし、上司がBさんから受け取ったExcelファイルを確認すると、その出来栄えはひどいものでした。
「コピペミスで氏名が重複している」
「氏名と電話番号が一致していない」
「氏名の変換ミス」
など、多くのケアレスミスが見つかりました。
Bさんは「早く作業を終えること」にこだわるあまり、確認作業を怠ってしまったのです。
仕事によっては、100%の精度を求めず、スピードが重視される場面もあります。
たとえば、急な商談用のプレゼン資料や、たたき台としての資料作成などがその例です。
こうした場合は、完璧ではなくても成立することがあります。
しかし、今回Bさんが依頼された仕事は、正確さが求められるものでした。
紙媒体のデータをミスなくExcelに転記する必要があったのです。
だからこそ、上司は「慎重にお願いね」「納期が厳しいなら相談してね」と注意を促していたのです。
Bさんは上司から指摘を受け、修正作業に取り掛かりました。
なんとか本来の納期である明日中には間に合わせましたが、上司のBさんに対する評価は芳しくありませんでした。
それは、最初に作業を仕上げた際、確認もせずに提出してしまったことが原因です。
もし最初から集中して取り組み、確認を怠らなければ、納期を守りつつ仕事の精度も保て、評価されていたことでしょう。
ターニングポイント
Bさんは「早く作業を終えること」にこだわり、確認作業を怠ったまま、上司にデータを提出します。
上司から「慎重にお願いね」と注意を受けていたにもかかわらず、Bさんはスピードを優先し、結果として多くのケアレスミスが生じてしまいました。
この判断をしてしまったことが、仕事の質を低下させ、上司からの評価を下げる結果につながったのです。
大人の発達障害 ADHD 集中できない 継続できない理由 case③
目に入った些細なことが気になり、大事な仕事を後回しにしてしまう
Cさんは午前中に上司から「明日は重要な商談があるので、資料を今日中にまとめておいてください」と頼まれていました。
すぐに資料作りに取り掛かろうとしましたが、ふと目に入った書棚のファイルが順番通りに並んでいないことや、ファイル内の資料が番号順になっていないことに気づきました。
「なんでファイルが順番通りに並んでいないんだろう?」
「資料の順番もめちゃくちゃだ…」
「せっかくだから、ちゃんと整理しよう!」
こう思ったCさんは、資料作りを後回しにして、まず「ファイルの整理」と「資料を番号順に並べる」作業を始めました。
作業を進めるうちに、ファイルの汚れや剥がれかかったシールも気になり、さらにファイルをきれいにする作業に取り掛かってしまいます。
その際、今回の商談で使用する資料以外のファイルも確認してみると、同様に整理がされていないことや資料が番号順になっていないことに気がつきました。
Cさんは「どうせなら」と考え、すべてのファイル整理と資料の並び替えを行うことに決めました。
16時になり、定時が近づいてきた頃、上司がCさんに進捗状況を尋ねました。
「資料の進捗はどんな感じ?」と聞かれたCさんは、その瞬間、自分が本来取り組むべきだった業務を思い出し、肝心の商談資料作りが全く進んでいないことに気がつきます。
最終的にCさん一人では間に合わず、部署全員で分担して資料を作成することになってしまいました。
Cさんは、商談のための資料作りという重要な仕事があるにもかかわらず、目に入った「ファイルの整理」や「資料の並び替え」に気を取られてしまったのです。
もちろん、ファイルの整理や資料の整頓も大切な仕事ですが、今優先すべきは商談のための資料作りでした。
ファイルの整理は後日でも問題ない作業ですが、商談資料の準備は「今日中に」行う必要があります。
今回の失敗の原因は、最優先で取り組むべき「商談のための資料作り」に集中できず、他のことに気を取られてしまったことにあります。
ターニングポイント
Cさんは資料作りに取り掛かろうとした際に、書棚のファイルの順番が乱れていることに気づき、「ファイルの整理」に着手してしまいました。
資料作成を後回しにしたこの時点で、Cさんの注意は本来の優先事項である商談資料作成からは逸れており、最終的に重要な業務が後回しになる結果となりました。
大人の発達障害 ADHD 集中できる取り組み・トレーニング
発達障害をお持ちの方が日常生活や職場で直面する具体的なケースについて、case①~③を通じて考察しました。
それぞれのケースでは、どのような状況で集中力が途切れてしまうのかについて掘り下げましたが、いかがでしたでしょうか?
次に、これらのケースを踏まえ、発達障害の特性に適した集中力の維持や向上を目指すための、具体的な取り組み方法やトレーニングについて、詳しく見ていきましょう。
仕事ややるべきことを小分けにして集中力を高める
一度に大きな作業に取り組むと、どこから手をつければ良いのか迷いやすく、途中で集中力が切れてしまうことがあります。発達障害を持つ方(ADHD)にとって、膨大な仕事量ややるべきことが多いと取り組む前に気持ちが圧倒されやすくなるものです。
こうした状況を避けるために、仕事ややるべきことを細かく分割することが有効です。
作業を細かく分割することで、気持ちの負担を減らし、一歩ずつ進むことができます。
これなら、途中で集中力が切れるリスクも減りそうです。
具体的な例をみていきましょう。
作業をステップに分ける
レポートを書くという仕事を例にとってみましょう。
まず、「リサーチをする」・「アウトラインを作成する」・「本文を書く」・「見直しをする」というように、全体をいくつかのステップに分けます。
それぞれのステップは、さらに小さな作業に分解できます。
「リサーチをする」というステップでは、「インターネットで情報を集める」・「本を読む」・「参考資料をメモする」といった具体的な作業に分けることができます。
時間管理と休憩の取り方
仕事を分割する際には、自分にとって無理のない時間設定を行うことも重要です。
たとえば、「30分作業して5分休憩を取る」といったルールを設けると、集中力を保ちながら作業を進めやすくなります。
これを繰り返すことで、長時間にわたる作業でも集中力を持続させやすくなります。
日常生活での活用例
部屋の片付けをする場合、「机の上を片付ける」・「クローゼットを整理する」・「床を掃除する」といった具合に、エリアごとに分けて作業することで、一度にすべてをやり遂げようとする負担を軽減できます。
こうすることで、達成感を得やすくなり、次のやるべきことにも意欲的に取り組むことができます。
仕事ややるべきことを細分化し、それぞれに集中することで、無理なく効率的に作業を進めることが可能です。
この方法を仕事にも取り入れることで、ADHDによる「集中できない」・「続かない」・「気が散る」といった悩みを軽減する助けになるでしょう。
タイマーやアラームを活用して集中力を高める
時間の管理は、集中力を維持するために非常に効果的です。
発達障害を持つ方(ADHD)にとって、時間の感覚は曖昧になりがちで、気づけば予定していた時間を大幅に超えていたり、逆に思ったほど進んでいなかったりすることがあるでしょう。
このような問題を解消するために、タイマーを活用することが有効です。
予定していた時間を超えてしまったり、逆に思ったより進まなかったりすることって、意外と多いかもしれません。
タイマーやアラームを使うメリット
時間を意識的に区切ることで、作業に集中しやすくなります。
たとえば、キッチンタイマーやスマートフォンのアプリを利用して、一定の時間で作業を行い、その後に短い休憩を取るという方法があります。
このように、作業と休憩のリズムを作ることで、無理なく効率的に作業を進めることができます。
ポモドーロ・テクニック
具体的な手法として、ポモドーロ・テクニックがあります。
この方法では、25分間の作業と5分間の休憩を1セットとし、これを繰り返します。
このサイクルを数回続けた後に、長めの休憩(15〜30分程度)を取ることで、長時間にわたる作業でも集中力を維持できます。
たとえば、レポート作成や勉強など、長時間の集中が必要な仕事にこの方法を取り入れると、成果を上げやすくなります。
モチベーションの維持
タイマーやアラームを利用することで、作業が予定通りに進んでいることを確認でき、モチベーションが維持されやすくなります。さらに、時間を守ることで達成感を得やすくなり、次の仕事にも意欲的に取り組むことができるでしょう。
日常生活での活用例
家事を行う際、「10分間だけ掃除をする」と時間を設定することで、短時間で効率よく作業を終えることが可能です。
また、仕事の合間にストレッチや軽い運動を取り入れる場合にも、タイマーを使って「5分間のリフレッシュタイム」を設定することで、体と心をリフレッシュさせることができます。
環境を整えて集中力を高める
集中力を維持するためには、作業環境を整えることが非常に重要です。
周囲の環境が散らかっていたり、気が散る要素が多いと、作業に集中するのが難しくなります。
そのため、作業を効率的に進めるためには、環境を整える工夫が必要です。
散らかった環境だと、どうしても気が散ってしまいますね。
環境を整えることはかなり大切です。
デスクの上には必要なものだけを置く
ADHDの特性である「衝動性」を管理するためには、視界に余計なものが入らないようにすることが非常に有効です。
その一つの方法として、デスクの上には必要なものだけを置くようにしましょう。
机の上をスッキリとさせることで、目に入る情報量を減らし、気が散る要素を排除します。
また、スマホの通知がなくても、視界にスマホがあるだけで集中力が削がれてしまうという報告があります。
実際、スマホが視界にあるとつい、SNSを開いてしまったり、何か面白いニュースがないかなど、気になってしまいますよね。
それほどまでに、私たちの脳は視覚から得られる情報に影響されやすいのです。
視界に余計なものがあると、衝動性が刺激されてしまうんですね。
特にスマホは要注意です。
このような脳の特性を踏まえて、デスク周りの環境を整えることが大切です。
まず、「今すぐには使わない資料」や「使っていない文房具」は、すべて引き出しや収納スペースに片付けましょう。
そして、目の前には現在の作業に必要なアイテムだけを配置します。
これにより、視覚的なノイズが減り、より集中しやすい環境を作り出すことができます。
環境を整える習慣をつける
環境を整えることは一度で終わるものではありません。
日々のルーチンとして、作業開始前に必ずデスクを整頓する、終業後に片付けをするなど、環境を整える習慣を身につけることで、常に集中しやすい状態を保つことができます。
優先順位をつけて効率的に仕事を進める方法
多くの仕事に直面すると、どこから手をつけて良いか迷ってしまい、結果として何も進まない状態に陥ることがあります。
複数の仕事を同時に考えることで気持ちが混乱し、ストレスが増すことも少なくありません。
こうした状況を避けるためには、優先順位を明確にし、重要な仕事から順に取り組むことが必要です。
複数の仕事を同時に考えると、結局何も進まないことってありますよね。
順序立てて進めることが解決の鍵です。
優先順位のつけ方
すべての仕事をリストアップすることから始めましょう。
たとえば、今日中に終わらせなければならない仕事、今週中に手をつける必要がある仕事、余裕があれば進めたい個人的な仕事などをすべて書き出します。
次に、それぞれの仕事に対して、期限や重要度を考慮し、緊急性の高いものから順に番号をつけていきます。
「締め切りが今日中の報告書作成」は最優先、「今週中の資料集め」は次に重要、といった具合です。
チェックリストの活用
優先順位を決めた後は、チェックリストを作成することが有効です。
リストに記載された仕事を一つひとつ完了するごとにチェックを入れていくことで、進捗状況を確認でき、達成感を得やすくなります。
たとえば、「報告書作成」・「メール返信」といった日々の仕事をリストにし、それぞれが終わったらチェックを入れていきます。
これにより、視覚的に自分の成果を確認できるため、モチベーションも上がりやすくなります。
柔軟な対応の重要性
ただし優先順位をつけたとしても、急な予定変更や新たな仕事が追加されることもあるかもしれません。
その際には、あらかじめ決めた優先順位を見直し、柔軟に対応することが大切です。
必要に応じて、新しい仕事をリストに加え、優先順位を再設定することで、常に最適な選択をして作業を進めることができます。
本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。
この記事の監修者
鈴木祐貴(すずき ゆたか)
大人の発達障害専門サポート
発達障害の特性を持つ大人のためのコンサルタントとして、多くの方の「自分らしく働く」未来をサポートしています。
発達障害を持つ方が普通に働き、安心して日常生活を送れるような環境作りに情熱を注いでいます。
経歴と実績▼
・人材育成のプロ:人材育成10年、マネジメント10年、管理職8年の経験を持ち、発達障害を持つ部下や後輩の育成にも成功。支店や部署全体の成績向上に貢献。
・多部門での実績:人事部、営業部、管理部、経営企画部で所属長を歴任。
営業・マーケティング、社内マネジメント、企画開発など幅広い分野で活躍。
大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)・グレーゾーン・繊細さん サポートについて
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
発達障害で悩んでいると、一人で抱え込みがちになってしまうかもしれません。
でも、あなたは決して一人ではありません。困ったときは、誰かを頼ってもいいんです。
むしろ、人とつながることで新しい視点や解決策が見つかることも多いものです。
自分の特性を理解し、それを活かすことで、これまで見えなかった可能性が広がります。あなたが感じている不安や悩みは、共感できる人が必ずいます。
私もその一人として、あなたの力になりたいと思っています。
これまで多くの方々が、自分自身と向き合いながら前に進んできました。
あなたもきっと、自分らしい生き方を見つけることができます。その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ幸いです。
ブログやSNSでは、発達障害に関する情報や日々を豊かにするヒントを発信しています。
ぜひご覧になってみてください。もし何か気になることや話してみたいことがあれば、いつでもお気軽にご連絡ください。
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