大人の発達障害 【仕事の優先順位をつけるのが苦手】
大人の発達障害、特にADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ方は、職場でさまざまな問題を抱えています。
その中でも、仕事の優先順位をつけることができないという問題は、特に影響が大きく深刻です。
こちらの記事では、優先順位をつけるのが難しい理由、その結果生じる感情や周囲の反応について触れていきます。
どの仕事が優先で、どの仕事は後回しにしていいの?
どうして優先順位をつけるのが難しいの?
大人の発達障害、特にADHDを持つ方は、脳の情報を処理する方法が少し違っており、他の人と比べて注意を集中させたり、情報を整理したりするのが苦手です。
“脳の情報処理”について詳しくみていきましょう。
脳の情報処理について
発達障害、特にADHDを持つ方は、脳の情報処理方法が発達障害を持たない方とは違います。
この違いが、何を先にやるべきか、どの情報が大事かの決定を難しくしているのです。
ここでいう「情報処理」というのは、私たちが毎日たくさんの情報に触れる中で、その情報をどう頭の中で整理して、どれを優先するかを決めることです。
ADHDを持つ方の場合、次のような理由でこれが難しくなります。
注意力・集中力の問題
ADHDを持つ方は、集中力を継続させることが苦手です。
また集中力が続かないため、たくさんの情報があるとどれに注目すべきか判断しきれなくなります。
情報の整理
発達障害を持たない人が自然とできる、「この情報は大事、これはそうでもない」といった情報の整理が、ADHDを持つ方には難しいです。
そのため、全ての情報が同じくらい重要に感じられてしまうことがあります。
このような特性のために、大事な仕事があるのに、さほど急がない仕事に時間を取られがちになります。
これは、脳が「どちらがより重要か」をうまく判断できていないためです。
(例)「報告書を書く」よう指示されていたが、「メールをチェック」を先にしてしまい、報告書はまだかと上司に注意された。
それでは、優先順位がつけられないことについて、具体的な事例と合わせてみていきましょう!
優先順位がつけられない理由
1.情報の取捨選択が難しい
脳がたくさんの情報の中から、何が大事で何がそうでないかをうまく選べないことがあります。
たとえば、重要なメールと広告メールを同じように扱ってしまう、などということが起こります。
2.集中が途切れやすい
集中しているときでも、ちょっとしたことで気が散ってしまいがちで、他のことが目に入ると、そちらに気を取られてしまいます。
大人の発達障害 【複数の仕事を同時に対応するのが難しい】
大人の発達障害、特にADHDを持つ方は、一度に複数の仕事を処理することが難しく、どれが最も重要かを判断することが苦手です。
なぜ一度に複数の仕事を処理するのが難しいの?
仕事の切り替えが遅い
一つの作業から別の作業への移行に時間がかかり、その結果、仕事の効率が落ちてしまいます。
たとえば、書類を作成している最中に電話を取ると、その後、スムーズに元の作業を再開することができない、などです。
重要なことを見落とす
複数の仕事を一度に抱えると、どれが最も重要か判断できず、大事な仕事を忘れてしまうことがあります。
発達障害を持つ方が、複数の仕事を同時にこなすことが難しい理由は、簡単に言うと、「マルチタスク」が苦手だからです。
マルチタスクというのは、同時に複数のことを処理する能力のことです。
◆マルチタスク例
・電話をしながらメールをチェックする
・料理をしながらテレビを見る
複数のことを同時に対応しようとすると、どれにどのくらい注意を払うべきか、どの仕事をいつやるべきか、などを決めるのが難しくなってしまいます。
具体的なシチュエーションをみていきましょう。
たとえば、あなたが仕事で報告書を書いているとします。
その最中に、同僚から別件について質問されると、どれにどれだけ注意を向ければいいのか、頭がパンクしてしまいそうになることはありませんか?
発達障害を持つ方は、仕事を上手く切り替えることが難しく、結果としてどれも中途半端になってしまったり、大事なことを見落としてしまうことがあります。
大人の発達障害をもつ方が複数の仕事をこなそうとすると、仕事の効率が下がるだけでなく、自分は「仕事ができない人間」である、などネガティブな感情を抱き、自信喪失につながる可能性があります。
大人の発達障害 【時間配分、時間の管理について】
ADHDを持つ方は、時間感覚に課題を持つことが多く、優先順位の高い仕事に適切な時間を割くことが難しいという特徴があります。
なぜ時間を上手に管理できないの?
大人の発達障害、特にADHDを持つ方は時間に対する感覚がずれている、予定の計画が立てにくい、など時間管理が苦手なことが多いです。
なぜ時間管理が難しいかというと、主に2つの理由があります。
1.時間感覚のズレ
発達障害を持つ方は(ADHD)は、”時間がどれくらい経ったかの感覚”が他の人とはちょっと違うことがあります。
10分が2分くらいに感じたり、逆にすごく長く感じたりもします。
だから、「あと5分で出発」と思っていても、実際には20分過ぎていた…なんてことが起こりがちです。
2.計画を立てるのが苦手
発達障害を持つ方(ADHD)は、これからやるべきことの計画を立てるのも苦手です。
1週間の予定を考えたり、今日やるべきことを順番に並べるなど、先を考えて計画を立てるのが、うまくできません。
具体的なシチュエーションをみていきましょう
(例)
朝起きてから出勤するまでにやるべきこと(シャワーを浴びる、朝ごはんを食べる、服を選ぶ、など)がありますが、発達障害を持つ方(ADHD)はこれらをどの順番で、どのくらいの時間をかけてやればいいのかを見積もるのが難しいです。
結果、いつもバタバタして遅刻しがちになります。
時間管理が出来ないと、さまざまな影響が出てしまいます。
1.時間の見積もりが難しい
仕事にどれくらい時間がかかるかを見積もるのが苦手。
たとえば、30分で終わると思っていた仕事が、実際は1時間以上かかってしまうこともあります。
2.締め切りを守るのが大変
業務遂行までの時間の見立てが甘いため、期限ぎりぎりに急いで仕事をすることになったり、締め切りを守れないことがあります。
3.予定の調整が苦手
1日のスケジュールを立てるのが難しく、予定がぎっしりで休む時間がなかったり、逆に何も予定がなかったりすることがあります。
大人の発達障害 【優先順位をつけるのが苦手】具体例 まとめ
- 緊急の仕事があるにも関わらず、突然の旅行に出かける。
- 締め切り前日になっても、重要なプレゼンテーションの準備をしない。
- 仕事のスケジュールを調整せずに、急に休暇を取る。
- 締め切り間近の仕事よりも、優先度の低い仕事を行う。
- 緊急の顧客の問い合わせを後回しにして、自分の好きな業務に没頭する。
- 会議の準備をせず、仕事のアイデアを書き留めることに時間を費やす。
- 重要な書類の整理よりも、自分のデスクの整理整頓に時間を使う。
- 提出期限が迫る報告書の作成を後回しにして、別の雑務を先に行う。
- プロジェクトの期限よりも、興味のあるセミナーへの参加を優先する。
- 重要なメールの返信を忘れて、インターネットサーフィンに時間を使う。
- 締め切りが迫った仕事を放置し、会社のニュースレターを読む。
- 顧客からの重要な要望よりも、社内の非緊急のイベントの準備を優先する。
- 会議でのプレゼンテーション準備をせず、趣味の話題で同僚と盛り上がる。
- 所属部署からの重要な連絡をスルーして、自分の業務手順の見直しに没頭する。
- 顧客の要望に応じるよりも、自分の仕事の効率化のためのツール作りに時間を使う。
- 緊急の報告書を書く代わりに、業界のトレンドに関する記事を読む。
- 会議の議事録作成を後回しにして、自分の好きな分野の調査に時間を使う。
- 重要な顧客との商談準備をせず、社内のデータ分析に時間を費やす。
- 緊急のクレーム処理よりも、自分の興味のある仕事に関するリサーチを優先する。
大人の発達障害を持つ方は、仕事が溜まることによるストレス、何から手をつけていいかわからないことに対する不安を常に感じています。
大人の発達障害 【不安とストレス】
仕事で何を先にやるべきか決められないと、不安やストレスが増えます。
優先順位をつけることができないと、仕事が山積みになり、どこから手をつけていいかわからなくなります。
このような状況から、「間に合わないかも」や「失敗するかも」など、ネガティブな感情を抱きやすくなってしまいます。
不安やストレスが生じる理由
「何を先にやればいいのかわからない」という状況が、不安やストレスを引き起こします。
なぜかというと、仕事がたくさんあって、どれから手をつけていいかわからないと、全部をうまくこなせるか不安になりますよね。
「このままだと期限に間に合わないかも」「もしやるべきことを忘れていたらどうしよう」なんて心配が頭をよぎります。
これが、不安やストレスにつながります。
人間は、コントロールできない状況に置かれると、不安を感じやすくなります。
仕事の優先順位がつけられないということは、自分の仕事の進め方をコントロールできていない状態とも言えるので、それがストレスの原因になるわけです。
大人の発達障害を持つ人がどのような気持ちでいるか、みていきましょう。
1.心がざわざわする
たくさんの仕事や、やることが頭の中でぐるぐる回り、何から手をつけたらいいのか迷う。
それがストレスになり、心が休まらない。
やるべきことがたくさんあって、頭の中がごちゃごちゃして、「一体何から手をつければいいの?」と迷ってしまうことってありますよね。
この状態が続くと、ずっと心が休まらずに、ストレスを感じやすくなります。
いわば、脳が常にオンの状態で、ゆっくり休むことができないのです。
2.気持ちが重くなる
仕事の期限が近づくと、「間に合わせなきゃ」・「失敗したらどうしよう」と、どんどん不安が増していきます。
この不安が、心に大きな重圧をかけることになり、気持ちが重く、沈んでしまいます。
発達障害を持つ方のリアルな気持ちに触れていきましょう。
「また重要なことを後回しにしてしまった」
優先順位をつけるのが本当に苦手で、いつも重要なタスクを後回しにしてしまう。そして、期限が近づいてきて慌てる。これがストレスで、不安になる。
「どうしてうまくできないんだろう」
他の人は上手に優先順位をつけて、計画的に仕事をこなしている。でも、私にはそれができない。自分のこのダメさに、落ち込む。
「毎回同じ失敗を繰り返す」
重要な仕事があるのに、どうしても他の些細なことに気を取られてしまう。いつも同じ失敗を繰り返して、自分が嫌になる。
「ストレスで夜も眠れない」
夜も眠れないことがある。頭の中で、やらなければいけないことがグルグルと回って、落ち着かない。
「もう、何でもいいやって思う時も」
時には、もう何でもいいやって思うこともある。優先順位なんてつけられないし、どうせ間に合わないんだから、と諦めてしまうことも。
大人の発達障害 【優先順位をつけるのが苦手】周囲のサポートとサポートの必要性
大人の発達障害を持つ方は、仕事での優先順位の設定や時間管理、仕事の整理などにとても苦労します。
本人の努力も必要ですが、職場の同僚や周囲のサポートも必要不可欠です。
具体的にどんなサポートが必要かな?
1. 明確な指示
仕事の指示は具体的に、何をいつまでにやるべきか明確に伝えることが大切です。
また、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じてフォローがあるとよいでしょう。
2. 管理ツールの活用
スケジューラーやリマインダーなどのツールを活用して、日々の仕事を管理しやすくします。
3. 優先順位の確認
仕事の優先順位に迷った時は、周囲に相談し優先度を確認しましょう。
周囲も仕事の適正やスキルなどを踏まえて優先度を明確に示すことが大切です。
本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。
この記事の監修者
鈴木祐貴(すずき ゆたか)
大人の発達障害専門サポート
発達障害の特性を持つ大人のためのコンサルタントとして、多くの方の「自分らしく働く」未来をサポートしています。
発達障害を持つ方が普通に働き、安心して日常生活を送れるような環境作りに情熱を注いでいます。
経歴と実績▼
・人材育成のプロ:人材育成10年、マネジメント10年、管理職8年の経験を持ち、発達障害を持つ部下や後輩の育成にも成功。支店や部署全体の成績向上に貢献。
・多部門での実績:人事部、営業部、管理部、経営企画部で所属長を歴任。
営業・マーケティング、社内マネジメント、企画開発など幅広い分野で活躍。
大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)・グレーゾーン・繊細さん サポートについて
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
発達障害で悩んでいると、一人で抱え込みがちになってしまうかもしれません。
でも、あなたは決して一人ではありません。困ったときは、誰かを頼ってもいいんです。
むしろ、人とつながることで新しい視点や解決策が見つかることも多いものです。
自分の特性を理解し、それを活かすことで、これまで見えなかった可能性が広がります。あなたが感じている不安や悩みは、共感できる人が必ずいます。
私もその一人として、あなたの力になりたいと思っています。
これまで多くの方々が、自分自身と向き合いながら前に進んできました。
あなたもきっと、自分らしい生き方を見つけることができます。その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ幸いです。
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