
大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症) 特性の違いや共通点
私たちはそれぞれ異なる個性や特性を持って生きていますが、発達障害を抱える大人にとっては、特性が生活や仕事に大きく影響することがあります。
特に、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)は、共通点もありつつ、違いがはっきりしている障害です。
これらの特性がどのように異なるのか、また重なる部分はどこにあるのかを理解することは、発達障害を持つ人々の支援や自分自身の理解にとって非常に重要です。この記事では、ADHDとASDの違いや共通点について掘り下げていきます。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)はどちらも発達障害のカテゴリーに属していますが、これらの障害が個々に示す特性や課題には共通点と相違点が存在します。
こちらの記事では、それぞれの具体的な違いと共通点、さらには両方の特性を持つ場合の可能性について解説します。

発達障害と言っても、ADHD・ASD・LD/SLDと主に3つのパターンがあります。
今回は、よく間違われやすいADHDとASDについてみていきましょう。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)の違い
発達障害には大きく分けて、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の3つの主要なタイプがあります。
これらはすべて、生まれ持った脳の特性や機能の違いに起因します。
ADHDとASDはどちらも発達障害という同じグループに属していますが、それぞれの特性にははっきりとした違いがあります。


~ADHD(注意欠如・多動症)の特徴~
ADHDの強み・弱み(別の記事に詳細をまとめてます)
注意力が散漫
集中を維持するのが難しい
すぐに気が散る
物を忘れることが多い
物事を計画的に進めるのが苦手
多動性と衝動性が顕著
長時間静かに座っているのが困難
静かに過ごすことが難しい
じっとしていると不快感を感じる
衝動的な感情や行動をコントロールするのが難しい


~ASD(自閉症スペクトラム症)の特徴~
ASDの強み・弱み(別の記事に詳細をまとめてます)
▼コミュニケーションの課題
言葉のやり取り、表情や身振りを使ったコミュニケーションが得意ではない。
自分の感情を表現したり、他人の感情を理解するのが難しい。
▼興味や関心の範囲の狭さや特定の対象へのこだわり
特定の分野や物事に対して非常に強い興味やこだわりを見せる。(過集中・マイルール・ルーチン)


一般的にADHD(注意欠如・多動症)の方は集中して勉強することや仕事に取り組むことに苦労することが多いですが、ASD(自閉症スペクトラム症)の方は自分の興味があることに対して非常に高い集中力を見せることがあります。
さらに、ADHD(注意欠如・多動症)の方は対人コミュニケーションに大きな問題が生じにくいのに対し、ASD(自閉症スペクトラム症)はコミュニケーションが苦手な方が多いのも特徴です。



ADHDとASDは同じ発達障害というカテゴリーに属しますが、特性は異なります。しかし、共通する特性も存在し簡単には判断できません。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)に共通する特性
上記の通り、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)にはそれぞれ異なる特性がありますが、共通する課題も存在します。
例としては、ミスの多発、周囲の雰囲気を察するのが苦手、言動が不適切と受け取られる、といったことがあげられます。
そのため、「空気が読めない」・「天然な人」・「理解力がない」などと言われてしまうこともあります。
ミスが多いことを例にあげると、ADHD(注意欠如・多動症)では注意力の散漫さが原因で集中力が続かず、ミスが発生しやすいです。
一方、ASD(自閉症スペクトラム症)の場合は、状況に応じた柔軟な対応が難しく、自分の強いこだわりが原因でミスを犯すことがあります。
”ミスをしてしまう”という同じ問題が見られますが、その背後には異なる原因があり、どちらの障害の特性に起因しているのかを特定するのは非常に難しいです。
また、ADHD(注意欠如・多動症)の典型的な特性である不注意ですが、ASD(自閉症スペクトラム症)においても、情報が多すぎて処理できないなど、不注意と同じようなことが起こります。
さらに、ASD(自閉症スペクトラム症)にはコミュニケーションが苦手という特性がありますが、これはADHD(注意欠如・多動症)でも、適切な応答ができない、衝動性が原因で感情的に反応してしまう、一方的に自分の話をしてしまう、などの原因でコミュニケーションに苦労する場面があります。
同じように見える問題でも、ADHD(注意欠如・多動症)かASD(自閉症スペクトラム症)かによって対応やサポート方法が異なることがあります。
このため、「発達障害」と一括りにせず、各症状を慎重に評価することが重要です。



同じような課題や悩みでも、ADHDの特性によるものなのか、ASDの特性によるものかによって、アプローチの方法は異なるので注意が必要です。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)を同時に持っているケース
発達障害は、単一の特性だけが見られる場合もあれば、複数の特性が組み合わさって現れる場合もあります。
特に、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)の特性を同時に持つ方は少なくありません。
複数の特性が重なる場合、社会生活への影響はより高くなる傾向があります。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)【子どもの場合】
ADHD(注意欠如・多動症)がある子どもが授業に集中するのが難しいと、教師が話している内容を理解できず、授業についていけないことがあります。
一方で、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、友達とのやりとりで、冗談や皮肉が理解できなかったり、適切にコミュニケーションを取るのが苦手な傾向があります。
この二つの特性が同じ子どもに見られる場合、学校生活をいわゆる普通に過ごすことは難しくなります。
集中力の欠如により授業内容が頭に入らない上に、対人関係の誤解が重なると、他の子どもたちとの関わりにも影響を及ぼし、友達作りや集団生活のハードルが一気に上がってしまいます。
ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)【大人の場合】
社会人でADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の両方の特性を持つ場合、会議や商談の場で、長時間集中するのが難しいため、重要な議題を見逃してしまうことがあります。
さらに、ASDの特性により、同僚や上司とのコミュニケーションエラーが起きてしまい、さまざな誤解が生じます。
上司の指示のニュアンスを読み取れず、言葉通りにしか理解できないため、成果が出なかったり、部署やチームに迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性により、仕事の要点をおさえられず、ASD(自閉スペクトラム症)の特性によって、対人関係でコミュニケーションエラーが生じていると、職場ではあまり歓迎されない状況になってしまいます。


両方の特性を持っている場合は、ADHD(注意欠如・多動症)だけ、またはASD(自閉症スペクトラム症)だけに焦点を当てた対処やサポートでは効果が得られにくいことも多いです。
そのため、どの特性がどの程度影響しているかや、本人が感じている課題や生きづらいと感じている部分を総合的に評価し、個々の状況に適した対策やサポートをすることが望ましいです。



自分の特性を理解し、正しく対処することで自分らしく普通に暮らすことは可能です。
”発達障害だから…”と悲観的になる必要はありません。
しかし、いきなり誰かの力を借りてサポートや支援を受けることは気持ち的にも難しいかもしれません。
まずは、自分を理解することから初めてみてください。
本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。


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