大人の発達障害 ASD(自閉症スペクトラム症)の強みと弱み
私たちが日々の生活や仕事を進める中で、持っている特性は個々によって異なります。
特に、大人の発達障害の一つであるASD(自閉症スペクトラム症)を持つ人々には、独自の強みや弱みが存在します。
これらの特性を正しく理解し、適切なサポートを受けることで、ASDの人々は自分の強みを活かし、課題に対処することが可能です。
今回は、ASDの強みと弱みについて詳しく見ていき、どのように活かし、または克服できるのかを考えていきましょう。
大人の発達障害 ASD(自閉症スペクトラム症)の強みと弱みについてみていきましょう。
ADHDとASD 特性の違い(特性の違いと共通点については記事に詳細をまとめてます)
ADHDの強み・弱み(ADHDについては別の記事に詳細をまとめてます)
大人の発達障害 ASD(自閉症スペクトラム症)の強み
高い集中力
興味があることにはとことん集中できる。集中して取り組んだ結果、短期間で大きな成果を残すことも。
ASD(自閉症スペクトラム症)の人々は、驚異的な集中力を持っています。
これは、特に興味を持ったことに対して、長時間注意を向け続ける能力があるからです。
この集中力は脳の構造や神経系の特性によるもので、周りの環境や他の刺激に惑わされることなく、一つのことに集中し続けることができます。
なぜ集中力がすごいのか?
脳の一部が特に発達しているか、あるいは神経系が特定の刺激に対して過敏であるため高い集中力が維持できると考えられています。
特に、興味のある分野に関しては、他の何ものにも気を取られることなく、深く集中できます。
具体的な例
【興味関心があることへの調べ事】
ASDの人が宇宙について非常に興味を持っていた場合、宇宙に関する書籍を何冊も読み漁ったり、インターネットで情報を探し続けたり、宇宙の構造や星の動きについて何時間も詳しく調べ、普通の人がすぐに飽きてしまうような細かいデータの分析や長時間の観察でも、飽きることなく取り組みます。
強みになる場面
このような集中力は、研究職やデータ分析、プログラミング、芸術など、深い知識と持続的な注意が求められる分野で特に価値があります。
集中して取り組むことで、他の人が見落とすかもしれない微細なパターンや情報を発見し、突破口を見つけ出すことを可能にします。
ASDのこの驚くべき集中力は、適切な環境や支援が整えば、特定の職業やプロジェクトにおいて非常に強力な武器となり得ます。
興味のある分野での作業を通じて、短期間で顕著な成果を上げることができます。
この能力を理解し、適切に導くことで、ASDの持つポテンシャルを最大限に活かせます。
ルールを守る
ルールにはとても忠実でどのような状況でもルールを守ることに徹底する。
ASD(自閉症スペクトラム症)の方の一つの顕著な特徴は、ルールを厳格に守る能力です。
一度ルールを学ぶと、非常に忠実に守ります。
なぜルールを守るのか?
自閉症スペクトラム症の人々は通常、予測可能な環境や一貫性を好むため、ルールを守ることに安心感を覚えます。
ルールがはっきりしていると、何を期待されているのかが明確になり、不確実性や不安を減らすことができます。
具体的な例
【図書館でのルール】
図書館には「静かにする」「本を元の場所に戻す」といった決まりごとがあります。
ASDの人は、こうした規則をきちんと守ることが得意です。
本を静かに読み、返却する際には、本の位置や角度、周囲の本との整列にも注意を払い、正確に元通りにします。
他の人がルールを守らなくても、ASDの人は一貫して規則を守り続けることができます。
強みになる場面
このルールへの忠実さは、特にルールが厳しく守られるべき場所で働く場合に大きな強みになります。
安全管理や品質保証の仕事、高い規律が求められる製造業などが挙げられます。
ルールに基づいて正確に作業することで、ミスの少ない高品質な成果を提供できます。
自閉症スペクトラム症の人々のルールに対する忠実さは、適切な環境や職業では非常に価値があります。
ルールが明確で、一貫性のある職場で最も力を発揮することができます。
論理的な思考
ロジックを重視するので、複雑な問題を解決するのが得意。
パズルや数学問題など、筋道を立てて考えることが必要な場面で力を発揮します。
感情や主観を排除し、事実やデータに基づいて物事を考えるのが得意です。
なぜ論理的な思考ができるのか?
論理的な思考とは、事実やデータを基にして、順序だてて考える能力のことを言います。
ASDの方は、感情や社会的なニュアンスよりも、数や図、規則などの具体的な情報を扱うことが得意なため、論理的な思考ができます。
たとえば数学の問題を解く時、感情などは関係なく、数字や公式が主な要素となるため、この能力が活かされます。
具体的な例
【論理的な仕事の例】
プログラミングは論理的思考を要する作業です。
コードを書く際には、特定の問題を解決するために一連の命令を組み立てる必要があります。
ASDの人は、その手順を論理的に追いやすいため、効率的かつ正確にプログラムを作成することができます。
強みになる場面
この論理的な思考能力は、STEM(科学、技術、工学、数学)関連の職業で特に有効です。
研究職やエンジニアリング、データ分析、会計など、正確なデータ解析と論理的な判断が求められる分野で特に強いパフォーマンスを示します。
また、日常生活での問題解決や意思決定の場面でも、論理的思考は大きなアドバンテージになります。
ASDの方の論理的な思考は、多くの職業や日常生活で非常に価値のある資質です。
複雑な情報も整理することに長けており、論理的な結論を導き出せます。
余計な情報に惑わされにくく目の前の問題解決に必要な情報に集中し、関係ない情報を無視することができるため、論理的な思考がよりクリアに行えるのです。
また、一見無関係に見える情報から関連性を見出すことも可能です。
几帳面で正確
完璧主義。何事もきちんと完璧にやり遂げようとする。
精密な作業やデータのチェックなど、細かい作業に向いています。
細部への注意が非常に求められる職業や活動で、この几帳面さは特に価値があります。
なぜ几帳面さが役に立つのか?
ASDの方は、普通の人が見逃しがちな小さなことやパターンにもよく気づきます。
ルールに従って物事を考えるのが得意なので、難しい問題も上手に解決できます。
つまり、情報をキレイに整理して、スムーズに考えることが自然にできるのです。
具体的な例
会計やデータ分析の仕事は、数値の正確さが非常に重要です。
ASDの方は、このような職種で細かい数字を一つ一つチェックし、誤りがないかどうかを確認する作業に非常に向いています。
また、研究室での実験や品質管理の分野でも、測定やデータ入力の際に同様の精度を発揮します。
強みになる場面
几帳面で正確な特性は、エラーが許されない医療分野や製薬業界、高精度が要求される工学のテストや組み立て工程など、精密さが求められる多くの場面で強みとなります。
これらの分野では、小さなミスが大きな問題を引き起こす可能性があるため、几帳面さは重宝されます。
ASDの方は不確実なことや次々に状況が変わるようなことにストレスを感じ、一度学んだ正確な手順や方法を厳密に守ることに安心感を覚えます。
このため、任されたタスクをきちんと、かつ正確にこなすことを重要視し、細かい作業において高い集中力を発揮します。
大人の発達障害 ASD(自閉症スペクトラム症)の弱み
コミュニケーションが苦手
みんなと一緒に動くのが苦手で、何をどう話せばいいかわからないことがある。
ASDの方は通常のコミュニケーションの他、非言語的なコミュニケーション(身振りや表情)、皮肉や隠喩、そして感情の変化を理解することに苦戦します。
具体的な例
プロジェクトミーティングで意見を共有する場面を考えてみましょう。
ASDの方は、どのタイミングで話を挟んでよいか、どの程度の情報を共有すればよいかがわからない場合があります。
人によっては直接的な質問に対しては明確に答えることができるものの、自発的に情報を共有するのは苦手な方もいます。
対処方法について
相手の言っていることがよくわからない時は、はっきりと説明を求めることで、誤解を避けることができます。
また、自分も言いたいことを簡単な言葉で伝えるように心がけるといいでしょう。
感情の表現を勉強するとコミュニケーションの上達につながります。
顔の表情や声のトーンから、相手の気持ちを理解する練習です。
チーム内での意思疎通が重要な状況、特に緊急性が高いプロジェクトやクリエイティブなアイデアが求められる場面では、コミュニケーションエラーが大きな弊害となります。
チームメンバー間で情報がスムーズに流れないことで、作業の遅れや誤解が生じてしまいます。
感情の読み取りが苦手
人の気持ちが理解しづらく、意図せず不快にさせることを言ってしまうことがあるため、時にトラブルの原因になる。
「感情の共感」と「社会的認知」の発達に問題があるため他人の感情や意図を理解することに苦戦します。
具体的な例
友人が家族の問題で落ち込んでいるときに、ASDの方はその悲しみを察知しづらく、間違った振る舞いをしてしまったり、場合によってはその場にそぐわない冗談を言ってしまうことがあります。
対処方法について
感情の読み取る訓練は、いろいろな方法がありますが、まずは自分ひとりで始められるものからスタートすることがおすすめです。
自分の日常の出来事を書き留め、それに対する自分の感情を記録します。
後で読み返すことで、どんな場面でどんな感情が出るかが分かり、他人の感情も理解しやすくなるでしょう。
ASDの方が感情を読み取ることに苦労するのは、脳の特性によるものであり、決して感情を大切にしていないわけではありません。
しかし、職場や学校、家庭など日常の多くの場面で、感情の読み取りが困難であることは、誤解やコミュニケーションのトラブルにつながります。
特に、チームでの協働や親密な関係を築く上で、他者の感情を理解し適切に反応することは非常に重要です。
こだわりが強い
自分のやり方に固執してしまい、他の人が提案する方法に柔軟に対応するのが難しい。
ASDの方はルーチンや特定のルールに強くこだわります。
それはいつも同じような環境でいると安心できるからです。
なので、急に何かが変わるとすごく不安になってしまいます。
そのため、自分の決まったやり方を変えたくないのです。
具体的な例
デスクの配置、文具の位置、仕事の進め方など、さまざまなことに順序や方法へのこだわりがある場合、それが微妙に変更されるだけで、深い不安やストレスを感じることがあります。
対処方法について
日常生活での小さな変化に少しずつ慣れる練習することもおすすめです。
たとえば、いつもと違うルートで学校や職場に行ってみる、またはいつもと違う朝食を食べてみるなど、いきなり大きく変えるのではなく、小さいことから始めるのがポイントです。
仕事や学校、家庭など、さまざまな社会的環境での柔軟性が求められる場面で、この強いこだわりは課題となります。
特に、新しい状況への適応や、他人との協力が必要な仕事を遂行する際、柔軟な対応が求められ苦労することも多いです。
没頭しすぎてしまう
一つのことに夢中になりすぎて、他の大切なことがおろそかになる。
特定のことに没頭しすぎてしまうことがあります。
これは「過集中」とも呼ばれ、ある特定の活動や興味に非常に強く引き込まれる状態を指します。
この特性は、日常生活や社会生活において様々な影響を与えてしまいます。
具体的な例
ゲームに夢中になりすぎて、他の大事なことを忘れてしまう。
約束の時間をすっかり忘れたり、学校や仕事をサボってしまうことも。
時には、ゲームに夢中で、食事や寝る時間まで忘れてしまうこともあります。
対処方法について
タイマーを使って予定を管理する方法が効果的です。
ゲームをする時はタイマーを30分にセットし、それが鳴ったら次の活動に移ります。
これはゲームだけでなく、仕事や勉強、休憩時間にも使えます。
タイマーが鳴ることで、「次のことを始める時間だ」というサインになります。
過集中は、特に複数の作業や仕事を同時にこなす必要がある場面では大きな問題となります。
学校や職場、家庭内での義務や責任をおろそかにしてしまうことがあるため、日常生活のバランスを崩す原因となることがあります。
ADHDとASD 特性の違い(特性の違いと共通点については記事に詳細をまとめてます)
ADHDの強み・弱み(ADHDについては別の記事に詳細をまとめてます)
本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。
この記事の監修者
鈴木祐貴(すずき ゆたか)
大人の発達障害専門サポート
発達障害の特性を持つ大人のためのコンサルタントとして、多くの方の「自分らしく働く」未来をサポートしています。
発達障害を持つ方が普通に働き、安心して日常生活を送れるような環境作りに情熱を注いでいます。
経歴と実績▼
・人材育成のプロ:人材育成10年、マネジメント10年、管理職8年の経験を持ち、発達障害を持つ部下や後輩の育成にも成功。支店や部署全体の成績向上に貢献。
・多部門での実績:人事部、営業部、管理部、経営企画部で所属長を歴任。
営業・マーケティング、社内マネジメント、企画開発など幅広い分野で活躍。
大人の発達障害 ADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)・グレーゾーン・繊細さん サポートについて
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
発達障害で悩んでいると、一人で抱え込みがちになってしまうかもしれません。
でも、あなたは決して一人ではありません。困ったときは、誰かを頼ってもいいんです。
むしろ、人とつながることで新しい視点や解決策が見つかることも多いものです。
自分の特性を理解し、それを活かすことで、これまで見えなかった可能性が広がります。あなたが感じている不安や悩みは、共感できる人が必ずいます。
私もその一人として、あなたの力になりたいと思っています。
これまで多くの方々が、自分自身と向き合いながら前に進んできました。
あなたもきっと、自分らしい生き方を見つけることができます。その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ幸いです。
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