
大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)とは?
日常生活や仕事の中で、学ぶことや新しいスキルを身につける機会は誰にでもあります。
しかし、特定の分野において学びの過程に苦労を感じる方も少なくありません。これは、単なる「不得意」や「努力不足」ではなく、発達障害の一種である学習障害(LD/SLD)の可能性があります。
特に大人になってから自分の苦手さに気づくケースもあり、今まで見過ごされてきた理由を探ることが重要です。本記事では、学習障害(LD/SLD)について詳しく解説し、その特徴や大人の生活における影響について考えてみたいと思います。
学習障害/限局性学習症(LD/SLD:Learning Disorder/Specific Learning Disorder)は、知的障害とは異なり、一般的な知能には遅れが見られないものです。
この障害の特徴は、読む、書く、計算するといった特定の学習において問題を抱えるという特性があります。

文字を読むのに時間がかかる、文字が正しく書けない、数の概念が理解できないなど、「読む」、「書く」、「計算」が非常に困難な場合、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の特性によるものかもしれません。


大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の特徴
学習障害は主に3つのタイプにカテゴライズされます。
読むことが苦手:「ディスレクシア」
文章を正しく読み、内容を理解するのが難しい
書くことが苦手:「ディスグラフィア」
文字を正確に書いたり、文法の正しい文章を作成するのが難しい
計算が苦手:「ディスカリキュリア」
数の概念が理解できなかったり、簡単な計算や筆算が難しい
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の特性と併存することもあります。



なぜ、読む・書く・計算が苦手なのか見ていきましょう!
大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD) 読む・書く・計算する なぜ苦手??
読むことが苦手:「ディスレクシア」
文字を視覚的に認識する脳の領域がうまく機能しないことが原因であると言われてます。
これにより、文字や単語が正しく認識できなかったり、文字がひっくり返って見えたりしてしまいます。
その結果、文章を読む速度が遅くなったり、文章の理解が不完全になることがあります。
単に読む速度が遅いだけでなく、読んだ内容を統合して全体の意味を把握するのも難しいという課題を持っています。
書くことが苦手:「ディスグラフィア」
脳の言語処理と運動の領域が上手く連携できていないことが原因であると言われています。
ディスグラフィアは、単に文字が書きにくいということだけではありません。
文字や文法が正しく書けない、句読点や言葉を適切な形で表現できないため、内容が伝わりにくいです。
その結果、アイデアをうまくまとめたり、整理して文章を書くことが苦手です。
計算が苦手:「ディスカリキュリア」
ディスカリキュリアは、脳の数学的情報を処理する特定の領域の活動が弱いため起こると考えられています。
そのため、数の概念や計算処理が困難で、足し算や引き算のような基本的な計算にも苦労します。
また、視覚的・空間的な認知にも問題を抱えており、図形や空間(cmなどの単位等)の理解が含まれる問題を解くのも苦手です。
その他、記憶力にも課題があり、計算手順や公式を覚えることが難しいです。
「ディスレクシア」・「ディスグラフィア」・「ディスカリキュリア」は子どもでも大人でも年齢に関わらず、特性は同じですが、学校や職場など個人が置かれている環境によって、直面する問題は異なります。
LD/SLD(学習障害/限局性学習症)は、知的障害とは異なります。
そのため、子どもの頃には「勉強が足りない」や「もっと努力が必要」と言われ、その特性が見落とされがちです。


大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD) なぜ大人になってから判明するのか?
先ほども述べたように、多くの場合、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)は子どもの頃は明確には認識されにくく、特に軽度の場合には「勉強が苦手」と見なされるだけで特別な支援を受けることなく過ごすことがあります。
しかし、大人になり社会に出て働くことで、子どもの頃に比べてより複雑で高い要求の作業が求められ、これまで見過ごされていた学習障害の特性が顕著になりやすくなります。
例えば、商品の詳細をまとめた書類作成、複雑な計算が必要な業務、長文のマニュアルの理解などが困難であると感じることで、自らがLD/SLDの特性を持つ可能性があると気づき、専門の診断を受けることがあります。



職場で上司や先輩、同僚から指摘を受けて発覚するケースもあります。
大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD) 大人の学習障害に見られる症状例(日常生活)
大人の学習障害を持つ方は、日常生活において以下のような困りごとが発生することがあります。
・買い物をしている際に、合計金額やお釣りの計算ができないことがある
・賃貸や保険の契約など、契約文書の内容を理解するのが難しいことがある
・病院の問診票など、枠内に文字を記入するのに苦労することがある
これらの問題は、加齢に伴う計算力の低下や視力の衰えとは全く異なるものです。
また、学習障害に関連する困りごとが積み重なることで、精神的なストレスが増加し、うつ病などの他の健康問題を引き起こすことがあります。
これを「二次障害」と言います。



自身の抱える問題を正しく理解し、適切な対策を講じることは、二次障害を防ぐ上で非常に重要です。


大人の発達障害 学習障害(LD)/限局性学習症(SLD) 大人の学習障害に見られる症状例(仕事)
大人の学習障害を持つ方が仕事で直面する問題について具体例とともに紹介します。
【仕事中に見られる学習障害の症状例】
・資料やマニュアルを正確に読むのが難しい
・口頭による説明では要点を押さえてメモを取るのが難しい
・税計算や〇%OFF となどの計算ができない
・報告書や議事録などの文章作成が苦手
上記は一般的な例ですが、実際には個々の特性や担当する業務によって直面する問題は大きく異なります。



これらの例と自分の経験を比較することで、得意分野と苦手分野が明確になることがあります。
得意と苦手を知ることは、ストレスの多い業務を避けたり、適切な対策を講じるために役立ちます。
LD/SLD(学習障害/限局性学習症)を持つ方にとって、家庭や職場での適切な支援やサポート、理解は非常に重要です。
例えば職場での支援として、文書を読む際に重要な部分をマーカーで強調する、作業指示をメモする、またはメールで送るなどの方法が有効です。
これらの措置は、情報の理解と処理を助け、作業の効率を向上させることが期待できます。
本記事に記載されている特徴は、発達障害を持つ全ての個人に当てはまるわけではなく、個人差があることをご留意ください。




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